こんにちは、Kです。今回はちょっと小難しい話も含んでます。頑張って読んでください。
AC成型のレシピ
カーボンファイバー製のマウスガードを作るならやはりAC成型であろう。
強度はこれが一番だし、デザイン的にもこれしかない。
問題はレシピだ。
通常、カーボンファイバーでモノづくりをしている会社では、AC成型をする際の温度と圧力の情報は他社へ持ち出すことは禁止されている。
そこは自分たちで最適な温度と圧力を地道に探していくしかない。
ジュール計算
そして強度計算であるが宮川先生はジュール計算をしているようだ。
ジュール計算のみを採用するのは撃力の考慮を欠くので、そこは議論の余地があるだろうがこの方式で簡易的に計算してみるとこうなる。
フットボール中のコンタクトで考えうる、衝撃の最大値を取る状況を
「体重80kgの選手が20m/s(筋肉量が最も多いと考えられる20歳前後の選手はこのくらいのスピードは出るらしい)のスイングスピードで足を振って、それがノーガードで全てのエネルギーが歯に加わる」
と仮定するならば、
1800J(ジュール)となる。(運動エネルギーの前後関係で計算できます。)
例えると、1mの高さから約183kgの重さの物体が自由落下して床に与えるエネルギーに相当するくらい大きい。
メイウェザーのパンチが1500Jらしいのだがそれより上ということになる。
(キックとパンチを比較して、キックの方が強いという話なので、当たり前と言えば当たり前な話ではあるが。)
耐久性
次は耐久性の話。
果たして薄く積層したカーボンファイバーはどのくらいの衝撃に耐えられるのだろうか。
結論、条件による。プレーヤーの希望する薄さや、層間すべりやせん断抵抗などを起こさない積層技術、積層レシピ、キュアレシピによって変わってくる。
しかし、トレーニングをバリバリしてる若い選手が全力で振った足をノーガードで食らったらマウスガードが割れた上で歯も破折する可能性があるということだけは想像に容易い。
0.3mmに積層したカーボンファイバーが7Jにギリギリ耐えられるので、実験はしていないがおそらく密度の高いカーボンファイバーを理論上最強の積層方法で2mmほど重ねて使用したとしても耐久性はせいぜい30Jくらいなのではないだろうか。どうやっても1800Jには届かない。
ここまで聞くと全くもって役に立たなそうに思えるだろうが、そういうわけでもない。
あくまで極端論法をとって理論上最悪な状況を考えたに過ぎないからだ。
そもそもそのような状況は頻発しないし、歯と全力キックした足との間には皮膚がある。
兎にも角にも言いたいのはマークした相手が手を後ろに振ってそれが歯に当たる(約10J)くらいならびくともしないし、従来のマウスガードより歯の破折リスクが軽減されているし、薄くてコーチングが可能と考えればかなりマシなのだろうがやはり諦めなければならない状況も存在するということだ。
薄さと衝撃耐久性はトレードオフの関係にある。
ちなみに硬化させたカーボンファイバーは一度破折すると終わりで、新しいものと交換しなければならない。
この辺りはEVA素材と違ってレジリエンスはほぼゼロなので注意が必要である。
では、また次回。 K